Wall Surrounded Journal

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セーフティネットという空想。

私がいろんな人と話をする中で最近よく疑問に思うのが、「政府はもっとセーフティネットの構築をすべきだ」という意見。


あまりニュースやらを見ない人に簡単に言うと、「セーフティネット」は直訳すれば「安全網」。
綱渡りをする人の下に横たわっている網を想像してもらうといい。

つまり、冒頭のセリフは社会という綱から落ちてしまった人を救う構造が必要だよねという一見、ちゃんと社会や政治に対して意見を持ってますよ的な印象を与える一言みたいに見える。


しかし、その言葉を聞く度に私はひとつの疑問を持つ。

「あなたのいうセーフティネットって具体的に何ですか?」って。


セーフティネットという言葉は非常に便利な言葉であって、日本にはそれが足りないと言えば何らかの批判をしたように聞こえてしまう。

だが、それは人々の思考を停止させてしまう、よくない言葉の1つだと私は思うのです。


たとえば、単に「セーフティネットを築け!」ではなく、いささか具体的に「派遣切りにあった人々を政府や自治体が雇う必要がある!」とか主張してくれればいい。
私はそれに対して「そしたらあなたがたが批判する公務員よりも付加価値の低い(利益を生まない)仕事をする人たちに税金を支払うのか?自治体は一般人の批判を受けてむしろ公務員を削減しようと必死なのに?」と具体的に批判が出来る。

しかし「日本はセーフティネットが機能してないよね」と偉そうに言われると、「じゃあどうすんだよ?」ってなるわけなんです。

外来語に多いですが、日本語にはこうした「思考停止語」が多い気がします。いや、どの言語にも多いのかもしれませんが、曖昧さを1つの文化とする日本では無思考にそうした言葉を発する自分に疑問を持つ人が少ない気がするのです。


んで、この点が示す1つの視点としてなんですが、日本人は無思考にマイナスイメージを持つ人が多いのでは?ということです。

「麻生さんは漢字読めないから…」と別にどうでもいい理由で麻生内閣を批判していませんか?
「なんか金に汚そう」だから小沢さんを批判していませんか?

そんな人は大概、具体的に何が悪いのかを問い詰めて、そのイメージの反対のことを強調して説得すると簡単に考えを変えます。
芯からマイナスイメージを持っているわけではなく、「なんとなく良くなさそう」にマスコミや周りの人の言葉をとって付けたようなイメージなのでひっくり返るのも早いのです。


直近の世論調査でいきなり定額給付金制度に対する支持率が上がったのも、「なんとなく良くなさそう」レベルの思考しかなかった人が多かったからだと思います。


んで、私の感覚なんですが、相手が話を聞く体制さえ整っていれば、そんな考えを持つ人は前述の方法をとれば案外簡単に思考を変えてくれる、説得させられてしまいます。
相手のプライドを傷つけない程度に相手の無思考を指摘し、その無意識的なマイナスイメージと反対のことを強調してあげれれば、その人は意外に簡単にマイナスイメージを払拭してくれるのです。だから私たちが相手を説得するためには相手の話を聞く=相手の無思考性を見つける必要があるのです。


厄介なのは頑固な無思考で、より具体的には「なんとなく持ったマイナスイメージ」をひたすら無理にでも自分の論理で正当化してしまった人です。
こうなってしまうとなかなか翻らない。

これだけ振り込め詐欺が話題になっていて、実際振り込みの直前に粘り強く警官が諭しても断固として振り込みをして騙される人がいる。
そういう被害に合う人ほど「振り込め詐欺」というものを何の思考もなく「他人事」と片付けてしまっているのです。
そして断固として自分の行為を正当化する。先ほど私が「相手が話を聞く体制さえ整っていれば」と書いた理由はそこにあります。



んで結論。
政府が「セーフティネット構築」を約束したとき、あなたはそれを聞いて「ちゃんと国民生活のことを考えてるな」と判断するのは早すぎなんです。
そんなとき、あなたが国に言うべき言葉は、もう上に私が書いておきました。


「あなたのいうセーフティネットって具体的に何ですか?」って。