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「年金受給権」にちょっと差した光

国税に「ノー」…主婦の訴え、税務行政揺るがす : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


◆最高裁判決の骨子◆

 所得税法では、相続や個人からの贈与で取得するものには所得税を課さない、と規定しており、その趣旨は、同一の経済的価値に対する二重課税を排除したものと解される。
 年金の各支給額のうち、被相続人死亡時現在の価値に相当する部分は、相続税の課税対象となる経済的価値と同一ということができ、所得税を課すことは許されない。
(2010年7月6日14時42分 読売新聞)



 簡単に説明する。

 生命保険の被保険者であった者が死んだ場合、その保険金受取人は一括で死亡保険金を受け取る例が多いが、年金で受け取りたいという声も根強い。

 前者のとき、相続税の課税対象は当然受け取る保険金全額です。そこに特有の非課税枠があったりして実際に課税される範囲は小さくなります。ごくフツーの家計であれば気にすることはまずありません。
 では、後者のとき、相続税の課税対象は何になるのでしょうか?受取人は一括ではなく、毎年保険金を受け取っていくのです。

 この場合の課税対象となるのが今回争点となった「年金受給権」です。
 年金を「受け取る権利」を課税対象とするのです。

 その「年金を受け取る権利」に相続税が課された後なのに、今度はその年金を実際に受け取ったその所得についても何故課税されなければならないんだ?というのが今回の主婦の訴えでした。
 そしてこの度、その訴えが功を奏し、長らく慣習で2重に課税されてきたその所得税がついに還付されることとなったわけです。


 しかし相続税はその受給権に対してかかって、一括で納めるのに、なんでわざわざ年金で受け取るの?という方はまぁその通りといえばその通りなんですが、この年金受給権、今年4月の税法改正までは相続税の圧縮(資産家の相続対策)にも使われていました。

 相続税24条は2010年3月まで、年金受給権の評価を受取総額よりも低くみなすことを可能にするものでした。今から勉強する価値も殆どないので、知りたい方はこちらをご覧下さい。
 要は、一括でもらうよりも、受取期間をうまく調整すれば年金でもらうことでかかる相続税を圧縮できたわけです。

 この方法、保険を販売する側も一時期積極的に用いて販売をしていたものの、改正と決まってから販売側はあまりアナウンスしませんでしたから、まだ変わったことをご存知ない方もいらっしゃるのではと思います。

 今回の判決は保険金を年金で受け取られる方には、よいニュースと言えます。
 しかし、実務上はまだ紆余曲折あるでしょう。運用上は相続税をとられずに年金を受給されている方もいるものの、今回の骨子は「所得税法では、相続や個人からの贈与で取得するものには所得税を課さない」と書いてあるからです。

 生命保険商品に限らず投資信託等のセールスを受けるときは、「税制は変わる」ということを常に頭に入れておきたいものです。