Wall Surrounded Journal

http://twitter.com/call_me_nots

ペイオフで利息まで保護する意味とは?

皆さんもご存知の通り振興銀が破綻し、国内初のペイオフ発動となった。


振興銀、13日午前9時から営業再開 - YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100912-OYT1T00251.htm

元本1000万円とその利息分の預金しか保護されないペイオフが国内で初めて適用され、破綻処理に入った日本振興銀行は、13日午前9時から全国の16店舗で営業を再開する。

 保護対象となる預金については、営業再開した店舗の窓口か、郵送で払い戻し手続きに応じる。入金には平均で5営業日程度かかる見込みだ。


おそろしく入金早ぇなぁーと思ったら、振興銀は普通預金扱ってなかったのですね。なるほど、そりゃ早いわ。

さて、”元本1000万円とその利息を保護”すると再三言い聞かされてきたペイオフなのだが、”その利息”とは何だろうか。
支払い済みの分も含むのだろうか。

おそらくそうではないだろうというのが、以下から分かる。


付保預金額の算定 - 預金保険機構
http://www.dic.go.jp/qa/gaiyou3.html#gyoumu3-2b

 同一預金者の預金等を合算した結果、保険対象預金等のうち、決済用預金以外の預金等が元本1,000万円を超え、かつ、複数の預金等が存在する場合には、預金保険法で定められた次のような優先順位により、元本1,000万円を特定することとなっています。
 (1) 担保権の目的となっていないもの
 (2) 弁済期(満期)の早いもの
 (3) 弁済期(満期)が同じ預金等が複数ある場合は、金利の低いもの
 (4) 金利が同じ預金等が複数ある場合等は、預金保険機構が指定するもの
 (5) 担保権の目的となっているものが複数ある場合は預金保険機構が指定するもの
 なお、確定拠出年金の積立金の運用に係る預金等がある場合、当該預金者の積立分も含め付保預金額を算定しますが、付保預金を特定するための優先関係については、加入者個人の預金等が優先されます。

つまり、ここに示されている図のように保護される元本を特定した上で”その利息等”ということだろう。*1

ということは、その保護される”利息等”とはつまり、過去の利払い分を適用することはないのだろうが、今回の振興銀マターはこの利息保護が預金者にどのようなインセンティブを与えるかについて重大な示唆を与えてくれる。


それは、預金者からしてみれば、預金保護の対象でさえあれば”金利の高い順に銀行に預金するのがベストだ”ということである。
おそらく定期預金となることになるのだろうが、自分の資産を1000万円ずつ、金利の高い順に銀行に預けることが最善の預金ポートフォリオになるわけだ。

今回のケースを「制度を悪用したモラルハザードだ」と指摘した金融庁幹部がいるらしいが、制度がそうさせているように思えるのは私だけだろうか?

こんな制度で、預金者は「取引金融機関の経営状態などを把握しておくことが大切です」とアドバイスする預金保険機構もよく意味が分からない。


預金保険では”保証”や”保障”ではなく、”保護”と記述するからそういうことなんだろうなぁとは思いながらも敢えて最後にもう1度疑問を提示しておく。


預金保険で利息まで保護する意味とはなんだろうか。

*1:ちなみに、この”等”とは、預金の種類により利息とは呼ばない給付補填備金が存在するためにそう記述されていると考えられる。