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新設の「電通ワカモン」が、そのダサい名前にふさわしい調査を公表

電通総研は12月15日、10-20代を取り巻く環境や社会問題を分析する研究プロジェクト「若者問題研究所」(電通ワカモン)の立ち上げを発表した*1そうだ。
そして、その記念すべき最初の調査がこれだったようだ。



高校生なりたい職業1位は公務員 電通が意識調査
2010/12/15 17:31【共同通信
http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010121501000566.html

将来なりたい職業のトップは公務員―。電通が15日発表した調査で、こんな高校生の意識が浮かび上がった。職業選択は収入の安定が重視され、就職問題は大学受験や恋愛など目の前の悩みよりも大きな不安のタネになっているようだ。
 将来の職業で公務員を希望しているのは全体の20%。2位が大企業の正社員(19%)、3位が介護士・保育士・看護師(11%)だった。


上から目線の設立主旨*2とは反対に、そのプロジェクトが行った「高校生アンケート 2010」という名の調査がニュースのヘッドラインになるさまは何ともお粗末なものだ。

こういうアンケートが出るたびにソースを探して調査概要を見るように心がけているのだが、今回のレポートは本当にひどい。

【調査の概要】

高校生調査
・調査対象:全国の高校生男女600名
・調査手法:モバイルインターネットパネル調査
・調査時期:平成22年9月16日(木)〜9月20日(月)
・調査実施機関:電通リサーチ


なんだこれは。
レポート中には「男性(N=300)」「女性(N=300)」という表記も見られるが、回答率も如何にしてそんなきっちりとしたサンプルを得られたのかも分からない。

そんな状況で

Q.将来、どんな職業につきたい、または、どんな生き方をしたいですか?
1つだけお答えください(高校生 N=600)

1位 公務員 20%
2位 大企業の正社員 19%
3位 介護士・保育士・看護師 11%


と示されたところで、見出しに”高校生なりたい職業1位は公務員”や”高校生の目指す職業は「公務員」と「大企業の正社員」”と書いていいはずがない。

さらに、この電通ワカモンのレポートはこの結果を総括して、

■高校生のなりたい職業 1 位は「公務員」

高校生の将来なりたい職業は「公務員」「大企業の正社員」「介護士・保育士・看護士」。
安定した収入が得られる職業につきたいという意見が、高校生の半数を占めました。義務教育のころからキャリア教育を受けてきた今の高校生は、早くから「社会や景気のこと」や「自分に合った適職」を意識しているのかもしれません。


とコメントしている。

1位と2位の差が数人しかいないのにトピックに選ぶのはまぁ置いといて、”安定した収入が得られる職業につきたいという意見が、高校生の半数を占めました”という分析はさすが、オレには出来ない目線だ。
介護士が安定なんて聞いたこともないし、「弁護士・税理士・公認会計士」じゃなくて「介護士・保育士・看護士」と一纏めにする手法なんてのは、電通グループが描く社会では必要なスキルだと思うが、オレには無理だ。


第一、「1つだけお答えください」というのが選択式だったのか自由回答だったのかも分からない。*3
しかし、この点は重要ではないのか。高校生が「大企業の正社員」と答えたのか、具体的にどこかの大企業の名前を出したのかは大きな違いである。


「不確実の時代」と呼ばれる昨今だが、そんな中で何か確固たるイメージを描いているならば、確かに”「自分に合った適職」を意識している”といえるのかもしれないし、すごいことだと思う。
しかし、携帯を使ったアンケートで”将来なりたい職業は「公務員」「大企業の正社員」”といわれては、具体的にイメージが湧かなかったと総括する方が正しいようにも思えてしまう。


その場合、1位が「公務員」との回答に深い意味はない。
冒頭の設立主旨なんてムチャクチャなもんだ。



他にもいろんな設問でステキなコメントが添えられていますが、興味のある方だけ読んで下さい。PDFはコチラですが、きっと閉口されるのではと思います。
本調査の最終的な総括である「まとめ」も難読文です。

○まとめ

先回りで将来を心配し、今から心の準備をしようとする今の高校生は、ゆとり教育世代でありながらも、実際には心のゆとりがあまりないようです。場の空気を読み、失敗しないよう堅実な生き方を心がけています。

しかし、彼らはただ大人しくしているわけではありません。場に合わせて個性あるキャラクターを演出し、仲間とシナジーして盛り上がろうとする行動がみられます。周りから浮かないよう横並び意識をもちながらも、同時に自分の場所をつくろうとする『個性(キャラ)重視』の意識が強いことがあきらかになりました。

さて、冒頭の記事では

日本の将来を不安と思う割合は86%。不安に思うことは就職が80%(複数回答)と最多で、大学受験(69%)、将来のお金(65%)、恋愛(59%)と続いた。


と書いてありますが、私にとってこの調査で一番興味深かったのはこの部分です。
といっても、電通ワカモンさん、共同通信さんと違って注目する部分はというと、

Q.日本の将来をどう思いますか?

「明るい」+「どちらかといえば明るい」と答えた高校生(N=600)

男性 22%( 4%+18%)
女性 11%( 2%+ 9%)

というところ。
なぜか不安な方ばかり注目したがってますけど、せっかく男女別に調査しているんなら、倍の差がついている、こここそ要注目ポイントだと思うのですがいかがでしょうか?

男子の方が将来に対して楽観的なんですかね?そんなもんなんでしょうかね?
このリサーチがしっかりとした調査であるというのなら、ここを調べることこそが調査の目的に適うと思うのですがいかがでしょうか。


日本の幸福度  格差・労働・家族

日本の幸福度  格差・労働・家族

*1:CNETより引用

*2:設立主旨は、「若者の抱えている問題から目をそらさず、時代のせいだけにせず、若者自身が問題を克服していくために、企業や社会がサポートできることは何かを追求していくこと」だそう。

*3:おそらく前者だろうとは思うが