Wall Surrounded Journal

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証券優遇税制延長により日本版ISAが2年延期に

平成23年度税制大綱が発表されました。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/ (内閣府税調)


さて、上場株式等の証券税制に関しては、以下に示されている図のように、来年からは現在の原則である一律20%に戻るはずでしたが、報道などでご存知の通り自見さん(というかFSA)の訴えが野田さん(というかMOF)に通じた、ということにして、税制特例の2年延長が認められました。

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ですが、本来は上図の通り、もう来年から優遇適用がない方向で調整が進んでおりました。
その代わりに導入が予定されていたのが、英国で1999年から開始されているIndividual Savings Account(ISA:個人貯蓄口座)の日本版でした。
実際に証券会社などはそのシステム対応の準備を始めていたものと思われます。*1

その概要は以下の通りですが、その制度と確定拠出年金との違いについては山崎元さんも以前こちらで解説をされていますので、一読をオススメします。
ただし、タイトルにあります通り本制度は延期が決まっていますので、急を要するものではありません。*2



日本版ISAとは? − 日興AM
http://www.nikkoam.com/fund-academy/isa#outline

1.非課税対象
非課税口座内の上場株式、株式投資信託等の配当所得、譲渡所得

2.非課税投資額
口座開設年に、新規投資額で100万円を上限(未使用枠は翌年繰越不可)

3.非課税投資総額
最大300万円<<100万円×3年間(2012〜2014年)>>(延期が確定)

4.保有期間
それぞれの口座で最長10年間、途中換金は自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可、本口座以外の取引との損益通算不可)

5.口座開設数
年間1人1口座(毎年異なる金融機関に口座開設可)

6.開設者
居住者等(その年の1月1日において満20歳以上である者)

7.導入時期
2012年から(延期が確定)

8.口座開設期間
2012年から2014年までの3年間(延期が確定)

※非課税口座とは、非課税の適用を受けるため一定の手続により金融商品取引業者等の営業所に設定された上場株式等の振替記載等に係る口座をいいます。

2012年〜2014年
●年間1人1口座開設可、投資額は100万円まで
●3年間で最大3口座、300万円まで投資可能

※日本版ISAに関する情報は作成日現在、日興アセットマネジメントが知りうる情報をもとに作成しています。
今後、法令や制度が明らかになるにつれて、内容等が変わる可能性もありますので、ご注意ください。


そして、今回その2年後の(と、予定されている)日本版ISAにおける上記の「非課税口座」に以下のものが追加されることが決まっています。

非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税(いわゆる「日本版ISA」)について、次の措置を講じます。

イ 施行日を2 年延長し、平成26 年1 月1日からの適用とします。

ロ 非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、次のものを追加します。

(イ) 非課税口座を開設されている金融商品取引業者等が行う募集により取得した上場株式等

(ロ) 非課税口座内上場株式等について無償で割り当てられた上場新株予約権で、その割当ての際に非課税口座に受け入れられるもの

(ハ) 2以上の非課税口座で管理している同一銘柄の非課税口座内上場株式等について行われた株式分割等により取得した上場株式等


「上場株式等」とは「非課税口座内の上場株式、株式投資信託等」であるため、一般の方が気になるのは(ロ)くらいかなと思います。
また、今月3日にグロソブのような「公社債で運用されている投資信託(定義上は上記の”株式投資信託等”に入る)」が公社債投資信託として原則の20%課税と強化されるのでは?という大和総研のレポートがありましたが、今回の税制大綱ではそのような記述はなかったようです。

ですが、有り得ない話でもなさそうなので、保有者や購入検討者はご留意された方が良いかもしれません。
少なくともこの2年の間に議論が起きなかったら、ISAの非課税口座の対象にはなると思います。


最後に、個人的にはこの延長を有難く思っています。
日本版ISAでの非課税口座は投資額の上限が定められており、今後の人生のために投資を予定している場合は「その非課税枠を全て使い切る」ことがベストとなります。
ですが、いきなり若者に年100万円×3年用意しろというのは厳しいものがあります。

今回、そのスタートが遅れるということで、改めてそれを目標に努力をするということが可能になりました。
既存の証券保有者は2年間と目される優遇税制延長機会をご利用いただくと同時に、少しずつ日本版ISAへの対応戦略を練っていく、というのが今後の正しい個人投資家ライフなのかな、と思うところです。


知っておきたい所得税の常識

知っておきたい所得税の常識

*1:まぁムダじゃないと思うけど担当者お疲れっす

*2:景気回復が早まったと判断されれば延長の打ち切りも有り得なくはないです。