Wall Surrounded Journal

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グルーポンおせちは近未来の香り

新年早々、インターネット界を賑わせたのは業界でウサギのように飛躍を狙う、あのグルーポンのネタだった。


ネット販売おせち 苦情で返金
1月3日 4時20分 (NHK)

横浜市の飲食店経営会社がインターネットを通じて販売したおせち料理が、予定どおり届かないなどとして購入者から苦情が相次いでいたことが分かり、会社側は代金を全額返金することになりました。
このおせち料理を販売していたのは、横浜市の飲食店経営会社「外食文化研究所」です。会社側の説明によりますと、おせち料理は、去年11月、一定の買い手が集まると大幅に割り引きされる、インターネットのいわゆる「共同購入サイト」を通じて注文を受け付けました。定価2万1000円が半額の1万500円になるとして、全国で500セット販売したということです。おせち料理は、大みそかに購入者に届く予定でしたが、配達が遅れたケースがあったほか、サイトに掲載されていた写真と比べ、実際に届いた料理の品数が少なすぎるなどとして、苦情が相次いだということです。会社側は、ホームページ上で、「調理に予想以上の時間がかかってしまった。できないものを無理に行ったことが、このような事態を招いた」と謝罪したうえで、購入者全員に代金を全額返金するとしています。また、共同購入サイトを運営する会社もホームページ上で謝罪しています。NHKの取材に対し、外食文化研究所は「大変なご迷惑をおかけして、深くおわび致します。料理の代金におわびの気持ちを加えて返金したい」と話しています。

その問題のおせちの画像や問題とされた製造工程等はコチラから



本来、この件に関してグルーポン自体の落ち度は限定的なはずだった。
今回の一件で露呈したのはそれ以上に膨らんだ「風評リスク」の顕在化である。

グルーポンはまず自社広告でグルーポンの存在とそのシステムを広く消費者になんとなく把握してもらうことが重要だ。
その広告はGoogleアフィリエイトなどで至るところで見るし*1、最近では民放でもみかけるようになった。

存在認知のクチコミを獲得しておき、各ターゲット層にウケそうな商品が提供されたときにはそれをベースに築かれる商品(クーポン)認知を瞬間的にその都度集めるという仕組みが、個人的にはグルーポンだと思っている。

クチコミの力に頼る分、それが逆転してしまった場合は本来ならば限定されていたはずの取引リスクを大きく上回る風評被害が生まれる。本件はそういうことだと思っていい。
なぜならば、本来は今回責められるべきはおせち受託元の「バードカフェ横浜」単独なはずと言っても大きな間違いにはならないはずだったからだ。

グルーポンはそこと広告契約を結んだだけに過ぎないはずなので、ここまでグルーポンの名前を出されて叩かれる筋合いも本来であれば、ない。

しかし、顧客は実際にグルーポンのホームページから購入するし、「バードカフェおせちで」というよりも「グルーポンおせちで」という方が事態のイメージが湧くし、よりセンセーショナルになる。
ここでクチコミの裏側にある「風評リスク」が露呈し、今回は実際に「風評被害(損失)」となって現れそうだ。


では、グルーポンとしてはどうやればこれを回避できるかということになると、その方法はグルーポン契約の相手方を審査する能力を拡充するしかない。
実際にグルーポンは現在も雇用を大きく増やしており、「ノーモアおせち」のために今後その拡充を自社で賄おうとするかもしれない。(ひょっとしたらそんなの拡充しないかもしれない)
だが、だとしても、その際に獲得すべき信用情報はやはり現状、外部に頼るほかないはずである。

帝国データバンク(COSMOS)や東京商工リサーチの情報収集力はさすがであり、それらは利用可能であるが、本音を言えば登録金融機関*2しか利用できないCICもいずれは利用できるようになるといいなと思う。

実際にグルーポン等の取引先の中には使用可能な期間が長いクーポンや継続的な役務(サービス)を提供する主体が散見され、本来ならばそれに対して何らかの対応*3が必要なはずである。
それを用意するだけの能力が取引先にあるのか(もしくは@shinjitwtさんの仰るようにその気すらないケースも十分に考えらるはず)の見極めには信用情報やリサーチの活用は有用だ。とりあえずそれにかかるコストの問題は後のために置いといて。

ネックなのは、これらがすべて風評リスクに備えるために必要なもので、それ自体が殆どプラスの価値を生み出さないというところではあるのだが。


●信用情報ニーズとグルーポンおせち


ここからは少しずつ妄想が入っていくので興味ない方はブラウザの矢印に手をかけた方がいい。

さて、これからは長い時間をかけて膨大な情報が無料に近づいていく。
その過程において、信用情報ももちろん例外ではないはずだ。
CICやTDBなどがそれらを独占し続けられるはずもないし、Googleの1カテゴリのように基礎的な信用情報に誰もがアクセスするという時代が来るかもしれない。

その最初の段階として、グルーポンやその他の民間企業がそうした情報へのニーズを高めていけばいくほど、そうした業界のサービス提供もニーズに合わせて形式を変えていくかもしれない。

また、実際問題としてそうした企業が取引先の調査・審査をアウトソースしたいと思っても、そのような委託先として適格なところというとあまり思い浮かばない。
前段ではグルーポンが自社審査をするかもと触れたが、本当ならそういった審査・調査ニーズがある企業が集まって外部に委託した方が効率的なように思う。
審査ニーズの高まりがあれば、そうしたサービスを引き受ける主体も出てきそうな気もする。

そういうところがさらに出てきて、リサーチ能力を拡充していくなどの流れがあれば、より我々は信用情報にアクセスしやすい環境が整うのだろう。
グルーポンおせちの1件はひょっとしたら、信用情報へのアクセスニーズが非金法の民間レベルに広がる始まりの始まりになるかもしれないのでは・・・新年1月1日、いろんな方とお話しながら少しだけそう思った。


*1:実際に私のブログにも頻繁に登場する。

*2:奨学金未返済対策として日本学生支援機構も加盟予定

*3:割り引いても問題のないような価格設定にしておくだとか、資金繰りや原材料・人員体制にバッファを用意しておくとか。まぁクーポンサイト見てるとディスカウント前の価格設定が恣意的なケースが多いので、消費者側は基本的に割引率はアテにしない方がいい。リアルコストで判断したい。