輸入物価再上昇をどう眺めるか
日銀から最新の企業物価指数が発表になった。
1月は103.9(2005年=100)で、4ヶ月連続の前年同月比プラスとなった(+1.6%)。
以下は「国内企業物価指数」「輸出物価指数」「輸入物価指数」 の動向(資料より、以下同様)。
ご覧の通り、昨年前半ほどではないものの、「国内企業物価指数(太線)」「輸出物価指数(青矢印サポート)」と「輸入物価指数(赤矢印サポート)」との幅が趨勢的に広がっていることが分かる。
国内企業物価の上昇は「石油・石炭製品」および「鉄鋼」で顕著だ。
ちなみに、前回輸入物価が高騰した2010年前半は資源メジャーと各国メーカーの間で鉄鉱石や原料炭などで大幅な値上げ合意があった時期であり、引き続きとなる資源価格上昇は販売価格への転嫁余力をさらに削っていくものと思われる。
新日鉄と住金の統合に関しては政治判断もプラスに働き、独禁法回避の流れとなりそうな空気だが、神鋼のみならず他社他業種にも再編・提携圧力は引き続きかかりそうだ。
輸入物価上昇は前述に加え、当然ながら食料や繊維にも及ぶ。輸入物価指数の表を見てみると円ベースでは円高がその抑止力ともなっている現状が確認でき、企業としてはいずれの方向へも短期的な為替の急激な変動は害を及ぼす懸念が大きい環境となっている。
世界的な原料価格上昇の日本から見た視点について、ブルームバーグの行った日銀サーベイで日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は
「日本では08年時に原材料価格の上昇が最終需要財に波及するまでに半年はかかっていた。よって日本でのCPI上昇が定着するには、資源インフレが半年以上続く、もしくは米国のQE2が延長する等の動きがなければ一過性に終わるだろう。」
と述べておられた。
米国のQE2については、中期以降の金利上昇傾向を背景に、コアCPI全体の約40%を占める住宅費という要因と「今年は経済は持ち直しながらも失業率は高止まりするだろう」というバーナンキ証言からデュアル・マンデート*1を考えれば、引き続き据え置かれると思う。
しかし、万一今年から来年にかけてQE3催促相場*2を見ることになるならば、交易条件悪化懸念は再びの日本の政治問題に帰されることになりそうだ。
だが、個人的には岩下氏の見方とは別に、Jobless Recovery*3定着期にはデュアル・マンデートの解釈が非常に難しく、結果的に、軽微なショックの発生時には政策の不確実性を上昇させるように考える*4ため、個人的にはQE2延長や新たな「非伝統的」緩和催促ということになるならば、商品相場と一部オフセットになるのではと思考している。ただ、当然ながらそれは売上予測低下を通じて企業の収益悪化要因となる。
しかし、いずれのケースにしても、原料入手価格上昇中の国内輸出企業にとっては、輸出シェアの低下がそのまま価格転嫁の難しさに拍車をかけるスパイラルが懸念されるだろう。