読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Wall Surrounded Journal

http://twitter.com/call_me_nots

指標から探るアラブ諸国の反政府要因

中東アラブ諸国におけるデモや反政府運動の伝播が懸念されている。
そんな情勢を反映して構成されたガーディアン(guardian.co.uk)の中東特集”Arab youth: the tipping point”が、アラブ諸国の若年人口比率(30歳以下)と若年失業率をコンパクトにまとめていて良かった。
これを見ると活発な世代に如何に不満が蓄積されやすい環境が整っているかが端的に示されている。*1


さて、以前に日本の元外交官、アラビストである野口雅昭氏*2のブログ「中東の窓」で以下のような記述がある。
チュニジアジャスミン革命」の最中で日本メディアのチュニジア情勢への報道姿勢について書かれたものだ。

(前略)
その裏でどういう強権政治がおこなわれているか、ほとんど語られていなかったのですから。
普通の人が驚くのは当たり前だと思います。
しかし、チュニジアを少しでも真面目に研究した人なら、ベンアリと言うのは警察、秘密警察を使った大変な強権政治で、反対派を徹底的に弾圧し、国民にも言論の自由などまたく認めていないが、その反面首相のghannnushi などと言ったテクノクラートを上手く使って、経済の安定を図り、中東、北アフリカでは珍しい経済発展を確保するとともに、特にイスラム原理主義者の徹底的弾圧を通じて、国内安定を提供してきた、と言うことは10年も前から知っていたはずです。
言わば鞭と飴の政策で、国民との間に無言の契約があって、自由は奪うが、替りに安定と繁栄を約束する、と言うことであったのが、世界不況などのために契約が履行できなくなったと言うことだと思っています。

中東の窓:チュニジア情勢(驚いたこと 2)


ここで述べられている「飴と鞭の破綻」はチュニジアに限られる現象ではきっとないのだろう。
そこで、今回は中東・北アフリカ諸国の時系列データが入手可能な8カ国を取り出し、それぞれ2007-2010年の実質GDP成長率、インフレ率、失業率、対GDP比政府支出の推移をグラフにして地図に貼付してみた。


f:id:call_me_nots:20110216172144p:image
(%表示; IMF "World Economic Outlook Database" October 2010 Editionより)
より大きな画像はAfrica and Middle East.png 直よりダウンロードして下さい。



名目GDP成長率の方が良かったかもしれないが、percent changeでのデータが参照元からは一覧として入手できなかったのでこの組み合わせで。
チュニジアとエジプトを比較すると、両国とも全体の失業率がステーブル、消費者物価が上昇トレンドにある中で、経済成長率は回復していかない状況に置かれているように映る。
冒頭のガーディアン記事に加えて、ひょっとしたら反政府ファンダメンタルの構成要因を探るヒントにはなるかもしれない。*3

最後に、Wikipediaやその他から2011年に入って2/15までの周辺諸国での出来事を引用、時系列にまとめてみたので参考にされたい。


100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

1月1日
エジプトのアレクサンドリアで、コプト正教会の教会を狙った自爆テロが発生し、21人が死亡。翌2日、首都カイロでは、抗議のため集まった一部信徒が暴徒化した。
1月9日
チュニジアで、失業と食料インフレに抗議するデモ隊が、前日から治安部隊と衝突し、この日までに14人以上が死亡。
1月12日
レバノンで、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの閣僚らが一斉に辞任し、挙国一致内閣が崩壊。
1月14日
チュニジアジャスミン革命が発生。ベン=アリー大統領はサウジアラビアへ脱出し、23年間の独裁政権が崩壊。
1月18日
イラク北部で自爆テロがあり、65人が死亡。翌19日には、イラク中部の自爆テロで15人が死亡した。
1月19日
チュニジアで、前大統領派を中心とした暫定政権が発足するも、抗議デモは収まらず。
1月20日
イラクで、イスラム教シーア派の聖地を狙った連続爆破テロがあり、50人以上が死亡。
1月23日
イラクのバグダッドとその周辺で、連続爆弾テロがあり、少なくとも10人が死亡。
1月24日
イラクのカルバラー周辺で、イスラム教シーア派を狙った連続爆弾テロがあり、最低33人が死亡。
イラン政府が、アメリカから釈放を要求されていた反政府活動家2人の死刑を執行したと発表。
コートジボワールで、ワタラ派がココアとコーヒーの輸出を一時停止。これを受け、ココア価格が上昇。
1月25日
エジプト各地で、チュニジアジャスミン革命に触発された数万人規模の反体制デモが始まる。
1月27日
イエメンで数千人規模の反政府デモが発生。翌28日には、ヨルダンの主要都市で大規模な反政府デモ。
イラクの首都バグダードシーア派地区で、爆弾テロが相次ぎ、53人が死亡。
1月28日
エジプト各地で、ムバーラク政権下では最大の反政府デモが発生し、民主化指導者のエルバラダイが軟禁される。
1月29日
エジプトで、25日に始まった反政府デモの死者が100人を超える。国軍は騒乱を黙認し、事実上の無政府状態に。
1月30日
ヨルダンの首都アンマンでイスラム組織ムスリム同胞団の国内支持者ら約3000人がデモを展開。参加者らは、リファイ首相の退陣および議会解散も要求。
スーダン南部の分離・独立を問う住民投票について、投票管理委員会は、賛成票が98.83%に達したとする暫定の開票結果を発表。早ければ7月9日にも独立宣言する見通し。
1月31日
北海ブレント原油先物が、エジプト危機の影響で、2008年以降で初めて1バレル100ドルを突破。
エジプト危機で、国軍が民衆の立場を支持し、民衆への武力行使を否定する声明を発表。
2月1日
エジプトのカイロとアレクサンドリアで「百万人の行進」が行われ、ムバーラクが同年9月の大統領選の不出馬を表明。
反政府デモの続くヨルダンで、国王アブドゥッラー2世が首相を更迭。
2月2日
エジプトのカイロで、反政府デモ隊とムバーラク大統領支持派が衝突し、3人が死亡。
2月3日
FAOが、前月の世界の食料価格指数が、1990年の統計開始以来過去最高となったと発表。
イエメンの首都サヌアで、サーレハ大統領の即時退陣を求める2万人以上のデモが発生。
ヨルダン・アブドラ国王が首都アンマンで穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団や同胞団の政治部門の野党、イスラム行動戦線の幹部らと会談。改革の遅れを認め、政治・経済改革に向けた協調を呼び掛け。
2月4日
エジプトで、ムバーラク大統領の即時辞任を求める「追放の金曜日」デモが行われ、カイロでは推定20万人が集まる。
2月6日
スーダン南部で、武装解除を拒否する民兵による反乱があり、この日までに50人以上が死亡。
2月9日
ヨルダンでバヒート新内閣が発足した。国王に解任されたリファイ前首相のもとで新自由主義的な経済改革を進めた企業寄りの閣僚らに代わり、公共部門を重視する保守層のベドウィン部族出身者らが入閣。
2月11日
エジプトのオマル・マフムド・スレイマン副大統領が国営テレビでホスニー・ムバーラク大統領の辞任を発表し権限を軍最高評議会に委譲(2011年エジプト騒乱)。
北西アフリカのアラブ国家モロッコの首都ラバトで10日、失業者ら少なくとも1千人が雇用確保を求めてデモ行進。「フェイスブック」で若者グループが「大規模な政治改革」を求めるデモを20日に実施するよう呼び掛け。
2月13日
アルジェリアの野党を含む反政府勢力が、現政権が退陣するまで毎週土曜日にデモを行うと発表。
2月15日
スーダン南部の自治政府が、ジョングレイ州で先週発生した武装勢力による襲撃で、少なくとも211人が犠牲になったと発表。
北アフリカ・リビア東部のベンガジで人権活動家の釈放を要求していた反政府デモ隊と、警官隊が衝突。十数人が負傷。

*1:データは入手困難な国もあり、参照年でまちまちなところは注意されたい。

*2:アルピニストの野口健さんはこの方の次男なんだそうだ。

*3:データの信憑性については留保。