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Wall Surrounded Journal

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公債特例法案と暫定予算

社民党が「同法案に賛成すれば、米軍普天間基地の名護市への移設を認めることにつながりかねない、との判断から (ロイター)」11年度の公債特例法案*1に反対する方向で調整に入ったようだ。
その影響を懸念する声が大きくなった。

もっとも、与党である民主党内部から最大16名の衆院議員が新年度の予算関連法案に造反する構えを見せており、社民党の市征治副党首が「民主党は党内の亀裂を生み出しておいて協力を求めてくるなんて本末転倒で、何を寝ぼけた話をしているのか」*2というのもまったくその通りとしか言いようがない状況。何せ社民党の衆院議席数はその半分もない6だからだ。


ここで、衆参の議席数を確認し、その「6」にアプローチがなされる理由をおさらいしておく。
まず、前回民主党が敗北となった参議院だが、こちらは言うまでもなく過半数割れしている。3議席の社民を取り込んだところで逆転の余地はない。

すると予算を1度衆院で通しても、さらに強引に衆院議員の2/3を集めて再可決を図らねばならない。
このとき、衆院総議席数480に対し、与党系は312議席*3であり、2/3である320に「8」足りない。
ひとまずのゴールを目指すにあたっては非常に大きな、社民「6」を取り込むために、同党のために政府の譲歩が模索され続けているのはこのためだ。

もちろん、こんなところに「−16リスク」が降りかかってこようものなら、もはやその折衝の意義はどこへやら。
もしも公債特例法案が成立しなければ財源の4割を占める赤字国債は発行出来ないわけで、政府の資金繰りは厳しくなり、予算執行には一部停止圧力すらかかる。万一その場合、国民の生活にどのような支障があるのかは、想像がつかない*4


そんな現状において、今月頭にアップされた自民党・河野太郎議員のブログエントリ「10兆円の余裕」にあるアドバイスは有益なものとなるかもしれない。
この記事を20字以内で要約しろと言われれば、それは「小沢一郎ごときに関わっている暇はない」の一言以外には見当たらない。
以下、一部引用する。

特例公債法案が3月末日までに成立しなかった時、果たして政府の資金繰りはいつまでもつのだろうか。

特例公債法案が成立しないと、建設国債の6兆円は発行できるが、赤字国債は出せなくなる。

しかし、赤字国債ではなく3−6ヶ月の短期の資金繰りのための借金をするための政府短期証券(FB)は、限度額を予算で定めており、予算が成立すれば発行できる。


財政法第7条3項では「財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。 」と規定されており、平成23年度の予算案には『「財政法」第 7 条第 3 項の規定による財務省証券及び一時借入金の最高額は、 20 , 000 , 000 , 000 千円とする。』と書いてある。
千円単位で分かりにくく、「20兆円」と書いてくれないあたりに冷たさを感じる。(そんなことはどうでもいいけど。)


さて、「もしも予算案が通れば」、ここは彼の言う通り、重要なつなぎ財源となる。
彼の記事のタイトルである「10兆円の余裕」もここに由来する。

ではなぜ、20兆円ではなく「10兆円の余裕」なのかといえば、それは国庫短期証券(T-Bill)が財政運営上、一時的に生じる資金不足を補うために発行されるものだからだ。
一般の家庭と同じように、政府だって必ずしもお金が必要なときに都合よく税収や税外収入が入ってくることはない。
河野氏は以下のように説明する。

ただし、毎年、年度初めは税収よりも歳出が多くなるので、政府短期証券で繋いでいる。10兆円程度は恒常的な資金繰りで発行されているので、特例公債法案が成立しなかった時の資金繰りに使える政府短期証券は10兆円程度しかない。


また、財務省には「6月までの必要経費は賄えるが、それ以降は厳しい」という声がある*5ようなので、これらを視覚的に表現してみようと、以下にグラフを作成した。



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これはMOFの公開資料である「政府短期証券(FB)の入札発行、入札結果・発行条件 」から作成したもので、予算案および関連法案が成立したときの短期の資金繰りを表現しようと試みたもの(筆者作成)*6

これによれば、確かに河野氏の仰る通り年度初めには必要な「つなぎ」財源が恒常的に10兆円程度存在しそうだ。
また、グラフからは何の裏付けもない場合の発行上限である20兆円に達するまでには7月中旬くらいまでは余裕があることも分かる。これはロイター記事にある財務省の声を裏付けそうだ。


以上、短期証券を裏技的に活用する*7方向から、公債特例法が通らないとどうなるのかについて見てきたが、そもそもの予算案が通らないとこんな話にもならない。
もしも未成立の公算が立てば、まずは本予算を通すまでの「暫定予算」を通すことに全力を傾ける必要がある。


最近では12年連続で予算が年度内に成立している*8そうで、前回暫定予算のお世話になったのは平成10年度予算案に苦しんだ橋本内閣(最大18日間の暫定予算)。その”暫定”予算の成立日が3月30日であったわけですから、その苦しみは相当なものだったのでしょう。
このとき以上に国債発行額も乗っかった今回の民主党・菅政権へのハードルはこれよりも高いものと予想される。

ちなみに、その前に実行された暫定予算も同じく橋本内閣で平成8年(50日間)。*9
現行の菅改造内閣のサプライズといえば与謝野氏の起用であったが、彼は微妙にもこの2期間の狭間における第2次橋本内閣(平成8年11月7日〜平成9年9月11日)での内閣官房副長官(政務)であった。このあたり、彼のノウハウへの期待については未知数といえるかも知れない。


さて、そうなると予算委員会での議論に期待をしたいわけだが、ご存知の通りこの国の国会議員さんは予算委員会でどうも予算に関しての議論をしない傾向がある。これは与野党入れ替わっても変わらないので、「そういうもの」と思った方がイライラが少なくて済むのだろう。

野党・自民党は今月1日の衆院予算委員会で、政府の11年度予算案への「対案」をパネルで披露したが、政府案対比での国債発行の減額は1兆円にとどまっていた。自民党・谷垣総裁は1月26日の衆院本会議の代表質問で「2年連続で借金が税収を上回る異常な事態」と批判したが、自民党案でも国債発行額が税収を上回るのは変わらない。*10


流れとしては、民主党は予算関連法案を「分割」、与野党合意できる部分からの細切れ成立を目指し、予算における野党の責任を考える必要がある自民党は暫定的に一部を延長する「つなぎ」法案処理を模索しているようであり、冒頭の「−16」リスク下では早めに暫定予算対策に取り掛かった方がよさそうともいえる。

いずれにせよ、「小沢一郎ごときに関わっている暇はない」。

国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来

国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来

*1:「平成23年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案」 http://www.mof.go.jp/houan/177/zk230124g.htm

*2:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110217/plc11021711210006-n1.htm

*3:民主305 国民新3 新党日本1 無所属2 その他1

*4:まぁ、まだ焦って想像する段階でもないのだろうし。

*5:http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19597020110217

*6:ざっと作ったため、同日借換え分は一旦借りる→返すという表現になっており、必要以上にギザギザしている点はご容赦を

*7:つってもそう簡単に市場はダマされてくれますかね的なお話は実務屋さんのエントリにどうぞ。 → http://85desk.blogspot.com/2011/03/blog-post.html

*8:現行憲法下の国会史上最長なんだそうだ

*9:暫定予算に関する情報としては@danboaさんのツィートを参考に調べた

*10:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110202k0000m010124000c.html