Wall Surrounded Journal

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これからのガソリン価格の話をしよう

えーしー(@thacthac)さんのツイートで、アメリカの各地区(カウンティ)ごとのガソリン価格地図の存在を知った。
興味深いのでまず以下に貼る。

USA National Gas Price Heat Map
http://www.gasbuddy.com/gb_gastemperaturemap.aspx

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カリフォルニアが真っ赤を通り越している感じがするが、アメリカ全体で見てもガソリンの小売価格は、ここ1,2ヶ月で大きく上昇している。


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その背景としては、中東の地政学リスクに加え、ドル安やQEなど様々に要因が語られてはいるが、本題から外れていくので、とりあえず"上がっていること"のみを確認したものとして話を進めていく。


さて、日本ではというと、以前に「輸入物価再上昇をどう眺めるか」でも触れたように、円高が幾分はガソリン価格の上昇を抑えている格好だ。
ただ、確かに日本で大きな地震が起きるたびに円高に触れるとはいえ、趨勢的には直近からは円安傾向にある。
つまり今後は、原油高騰*1と円安のダブルパンチとなる公算もそれなりにある。

次に以下に示したのは、石油情報センターが公表しているレギュラーガソリンの「一般小売価格」データ。(「換算レート」は財務省の貿易統計を参照にまとめてあるコチラより)


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この図を以下のようにアメリカと比較してみると、日本国内の小売価格はアメリカのように2年半前の水準を超えるというようなことにはなっていないことがお分かりいただけるだろう。


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(右:アメリカ・レギュラーガソリン小売価格 EIA - "Weekly U.S. Retail Gasoline Prices, Regular Grade"



ここで、今度は日本の元請けのガソリン輸入単価(円/L)と為替レートを同じグラフに並べてみる。
大元のソースは財務省の「日本貿易統計」を石油連盟がまとめて発表しているものだ。


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輸入元請けの単価を見ても、これまでの論点と同様であることが確認できよう。

それでもアメリカでは安くて、日本は高いの…?

さて、これまでの図を見てきて、気になる点が幾つかあるかもしれない。

たとえば、アメリカでのガソリン小売価格の表示だ。
単位が「$/G」となっているが、これは「1ガロンあたり」の価格を示している。
日本にいると馴染みのない単位なので、グーグル先生に聞いてみると、すぐに「1米ガロン = 3.78541178 リットル 」と返してくれる。

つまり、アメリカ国内の平均小売価格からすれば、最近では”1リッター当たり約1ドル”と日本人にとって分かりやすい価格になっているわけだ。
これを書いている時点で1ドル80円台であるから、「急激に上がっている」とはいえどもやっぱり羨ましい。
こういうときに日本はやっぱり資源輸入国だなぁ、と思い出してしまう。

他にも気になる点。
1つ前の画像に戻ってみよう。輸入単価の図だ。
ここでは直近の単価が1リッター当たり40円台で推移している。

なんだこれは。
パッと見、ガソリンの販売は相当儲かるのかとも一瞬思ってしまう。


だが、そこに足される、ガソリン小売に占めるガソリン税の割合は相当大きい。
ガソリン税は53.8円/Lだが、なんとそのガソリン税にも消費税がかかっているのだ。*2
合計するとリッター当たり約56.5円となる。

輸入単価に税金、運搬コストや販売経費を考慮すると、ガソリン小売価格の上昇は消費者もきついが、ガソリンスタンド(SS)にも相当辛い*3ことになる。

あれ?そういえば民主党(DPJ)って…

「ガソリン値下げ隊」なんてことやってましたよね。
上の画像でガソリンが高かった、2008年のことでした。

あのときはガソリン税のうちの「暫定税率*4」を撤廃しようというパフォーマンス活動を行っていました。
結果、25.1円の時限的な引き下げに繋がりました。

さて、当時の民主党は野党。
暫定税率の撤廃」も謳ったマニフェストで政権交代を果たし、与党の座を握りました。
その後はというと…。


2010年5月11日、民主党は主要政策の財源確保のために、当時の「暫定税率」など廃止の公約を正式に削除したのです。
より正確には、租税特別措置法が改正され、期限を定めずに当分の間、特例として「1リットルあたり53.8円」のガソリン税が維持されることになったのです。
25.1円分の「暫定的」な(都度延長されてきた)税金が、25.1円分の「特例的」な(期間を定めず適用され続ける)税金に置き換えられたのです。


ですが、実はこのとき同時にもう1つ決められたことがあります。
それは「トリガー条項」と呼ばれるものです。

ガソリンの3か月の平均小売価格が1リットル当たり160円を超えた場合がトリガーとなって、その場合、特例税率(25.1円)の適用を停止する仕組みが設けられたのです。
今年は4/11時点で151.8円/Lなので、先程述べた「ダブルパンチ」があれば、トリガーは案外”すぐそこ”にあることになります。
特例税率が適用されると非常に大きいですね!


…とはいえ、やはりそんな簡単にいくわけではなく。。。

このトリガー条項、撤廃の公算が強くなっています。

●トリガー条項廃止を提言できず 民主党税PT 2011.4.13 12:47 −産経MSNニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110413/fnc11041312490010-n1.htm

政府としては貴重な震災復興財源であるだけに、このトリガー条項のインパクトはかなり大きいことがこの記事でも述べられています。
たとえいきなり、リッター10円分水準が切り上がったとしても、国会はおそらくトリガー発動までの3ヶ月の間に、条項の撤廃に踏み切ることでしょう。

というわけで、ドライバーには厳しい限りですが、もしもトリガー条項が撤廃ということになれば、支払うガソリン代の一部は”義援金”と考えてみるとかいかがでしょう。
気分的な解決にすらなってないかもしれませんが…。


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*1:http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E3E1E2E2888DE3E1E2E6E0E2E3E39797E3E2E2E2

*2:要は二重課税。http://www.kakimi.co.jp/2k6060.htm

*3:http://www.kakimi.co.jp/040000.htm

*4:現在で言う特例税率