Wall Surrounded Journal

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朝日新聞の不正送金追及取材に、ユニバーサルエンターテインメント側「もはや度を超えた組織的な反社会的活動」

昨年末「パチスロ機大手、比の高官を巨額接待 カジノ開発めぐり」(朝日新聞デジタル)から、現在では第三者委員会を立ち上げて調査を受ける他、大証も調査に乗り出し、証券取引等監視委員会も関心を寄せているユニバ「マニラ湾に消えた大金」事件ですが、本日の開示が非常に面白かったので取り急ぎメモ。
日本語おかしかったらごめんなさい。


情報を握っている朝日新聞側の今朝の攻撃は以下の2本。
[1]:朝日新聞デジタル:「コンサル費」に2500万ドル UE社カジノ事業、資金の流れ焦点
[2]:朝日新聞デジタル:巨額送金、会長ら認識 遊技機大手UE社 決議書に署名

両者を読み進めるにあたっては、ユニバ側5日付「第三者委員会による提言の受領についてのお知らせ」にてすでに開示されている内容が参考になります。

株式会社ユニバーサルエンターテインメント「第三者委員会による提言の受領についてのお知らせ」
http://www.universal-777.com/corporate/ir/release/pdf/2013/20130205.pdf

第三者委員会では、資金の流れを検討するにあたって、①500 万ドル、②2500 万ドル、③1000 万ドルへと分節を行うことが適切であるとされました。

これは、本件送金が 2010 年 1 月ないし 5 月に生じたという点では共通するものの、②については、当社内の戦略会議を経て決定された当社の意思表示としての投資行為である一方、①および③については、当社における内部手続が履践されていなかったことを理由として、それぞれ当社から関与者に対して訴訟が提起されていること、および、支払先法人が異なること等から、それぞれ別事象と考えることが客観的に適切であると考えたことによる、とされています。

第三者委員会はまず、朝日新聞やロイターなどに報道された「不透明な4000万ドルの資金の流れ」について、それを3分割して真相を究明していくとしています。

これにより、(フューチャー・フォーチュンとスービックレジャーとの間で交わされたコンサルティング契約について支出されたという)②の2500万ドルは「当社内の戦略会議を経て決定された当社の意思表示としての投資行為」であり、「金銭の流れに関しては、不透明さは存在していない」とのことで、検討から外れています。


これに対し、朝日新聞側は本日の記事[1]にてフィリピンの日本企業関係者への聞き取り調査から「2500万ドルもの契約を、現地のコンサルタントと結ぶことは通常は考えにくい」との発言を引用し、その金額の妥当性が不明であると指摘しています。


また、記事[2]では③の1000万ドルについて朝日側が更なる情報を出してきました。
その1000万ドルというのは、すでにユニバ側が第三者委員会から「貸倒損失への補填として用いられた」と報告を受けていたもの。これによりユニバ側も過年度決算の修正を視野に入れています。

オ 1000 万ドル(③)について

(ア)  第三者委員会による本提言によれば、当該金員は、当社における約10億円(≒1000 万ドル)の貸倒損失への補填として用いられたものに過ぎないとの事実が明らかになったとされています。

(イ)  この背景として、第三者委員会は、当社の貸付金回収の事実経緯を指摘しています。
すなわち、当該貸付金回収に関しては、当社の経営陣から管理部に対する回収の命令が出ていた一方で、監査法人からは貸倒処理を行うべきとの指摘を受けているという状況にありました。そのような中、当時の財務経理部長らが当社の資金を還流させて穴埋めをおこなうという行為に出たものと考えられますが、その動機に関しては現時点では未解明である、との指摘を受けています。

(ウ) 損失補填の手法については、端的にいえば、「前記②の 2500 万ドルに関連して 1000 万ドルを紛れ込ませて上乗せさせ、ユニバーサルへと還流させることで導き出したもの」との指摘がなされておりますが、当該スキーム実行関与者に関しては、S 氏を含め関与者のヒアリング等は経られてはいないものの、当社内部の会計処理の履歴、香港における 1000 万ドル相当の円建て小切手の振出しに K 氏が自ら赴いて日本へとこれを持参して帰国していること、N 氏による当該スキームを立案した書証が発見され筆跡鑑定が行われていること、H 氏と K 氏との間で S 氏を当該スキームの重要な関与者として位置づける電子メールが存在していること等の客観的な証拠による推認がなされております。

(エ)  第三者委員会によれば、当該取引及びこれに付随する取引もしくは会計処理については、当社において、過年度決算の修正の要否検討を促すべきとの結論に至ったため、本提言に及んだものとされております。又、当該修正による損益への影響は、保守的に考慮した場合には約 8 億円強のマイナスとなると思われるとされております。

なお、第三者委員会としては、当該取引が行われるに至った理由・背景、その発見経緯等については、原因分析及び内部統制上の課題として把握する必要があるため、当社と当時の当社財務経理部長 K 氏、元アルゼ USA 日本支社代表者 H 氏、元アルゼ USA 日本支社管理部長 N 氏との間の訴訟の経過も踏まえつつ、引き続き検討を行う予定とされています。


さて、この③1000万ドルについて、第三者委員会が調査を進めているのは、「①および③については、当社における内部手続が履践されていなかったことを理由として、それぞれ当社から関与者に対して訴訟が提起されていること、および、支払先法人が異なること等から、それぞれ別事象と考えることが客観的に適切であると考えたことによる」からでした。

[1]の記事はその点に突っ込んでいくものです。
記事では、朝日新聞が入手したとする当時の取締役会議事録に、「アルゼUSAの取締役を兼務する岡田和生・ユニバ社会長と岡田知裕・ユニバ社取締役が4千万ドルの送金に関する取締役会決議書に署名をしていた」旨の記述があったとし、2500万ドル以外の部分も含めてユニバ社首脳陣の関与があったのではないかと指摘しています。

これに対し、ユニバ側は少し時間をかけ、その日の夜に「本日の一部報道について」というリリースで

しかしながら、かかる決議書は、アルゼUSA 社内において適式な手続きを経た書面として存在しておりません。

アルゼUSA における意思決定に関する書類に関しましては、全て親会社である当社が把握することはもちろん、アメリカにおいてゲーミング事業に携わっていることもあり、NGCB(Nevada Gaming Control Board )への提出が義務付けられておりますが、そこへのファイリングもなされておりません。

もとより、送金に数ヶ月遅れて作成されたという当該「取締役会決議書」なる書面に関しましては、当社としてはその作成の経緯を含め把握できておらず、そのような書面が、なぜ、当該報道にいう「議事録作成に関わった同社元幹部」の手元にのみ存在するのか全く了解できないという状況にあります。


と説明。

そしてここで、

なお、同報道においては、内部資料に議事録作成経緯が記載されている、などとも書かれておりますが、当社においては、前記送金から数ヶ月後に、当社元従業員が、議事録起案担当者と不可解なメールのやりとりを通じて、当該担当者に明らかに事実に反する内容の議事録を作成させていた形跡が発見されております。

と、朝日側の攻撃に防戦一方ではなく、反撃を開始します。

さらに、その勢いに乗ってなんと本文末ではユニバ側も怒り新党を結成!

なお、朝日新聞は、当社の取引先に対して、実名報道により害が及ぶことを仄めかした上で、取引先に当社との守秘義務違反を犯して情報提供するよう強要した事実も明らかとなっており、朝日新聞担当記者の不当な取材活動は、もはや度を超えた組織的な反社会的活動と言わざるを得ません。

よって、当社はここに断固として抗議の意を表すると共に、各種の法的措置を採ることを検討します。


おお・・・。

実は、この日のユニバ側の開示には
「警視庁への事件情報提供」
http://www.universal-777.com/corporate/ir/release/pdf/2013/20130208.pdf
という斬新な開示もあったのですが、この文末もなかなかのインパクトで、思わずメモしてしまいました。


こうして、両者の闘いは
朝日側「不正送金の実態解明を」vsユニバ側「お前んとこの不当な取材活動も十分反社やがな」
という謎のサブバトルにも発展しましたことをご報告申し上げます。

こちらからは以上です。