Wall Surrounded Journal

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時系列で眺める中国のこれまでの金融改革

1.不良債権処理〜株式制への再編

中央汇金による大手金融機関支援とSWFスキーム


1997後半
アジア通貨危機を受け、海外機関投資家・専門家が中国4大国有商業銀行(中国工商銀行中国農業銀行中国銀行中国建設銀行)の不良債権比率を30-50%と推計。4大銀が債務超過の状態と判断。
金融危機回避を目指し、中国当局が4大銀の支援をスタート。
1998  
特大型国有企業が制度改革後に上場することが認められる。
→国有企業の国有銀行への依存が緩和され始める。
1998/08  
中国財政部が2700億元を4大銀行に資本注入。
1999     
財政部全額出資で4大銀行の不良債権を買い取るAMC(金融資産管理公司)を4社(信達・東方・長城・華融)設立。1.4兆元を簿価で買取。(〜2000/07)
2001/11
中国人民銀行*1の戴総裁(当時)がAMCによる買取後も4大銀の不良債券が1.8兆元残っていると発言。
2001/12  
中国がWTOに加盟。その際に外資系銀行に対し、5年以内に完全な市場参入を認めることを約束。経営環境の厳格化が懸念される。
2003/10  
これに対応するため、一定の国有銀行を株式制に再編し、不良債権処理を加速させ、資本金の拡充により上場要件を整えることを中央委員会全体会議で明確に打ち出す。
2003/12  
同年誕生の中央汇金投資有限責任公司(財政部・中国人民銀・国家外汇管理局*2の共同出資)が450億ドルを拠出し、中国銀(当時4大で自己資本比率が最高)・中国建設銀(当時4大で不良債権比率が最低)へ均等に注入。出資比率は当時それぞれ67.5%、70.7%(原資は国務院が外準から拠出)。
2004/06
中央汇金が交通銀行(4大銀行に次ぐ規模)へ30億元の資本注入。
2004-2005
当局が自己資本の補完的項目への算入が認められる劣後債の発行を許可したことにより
中国工商銀・中国建設銀・中国銀・交通銀の4行が計1470億元に及ぶ劣後債を発行。不良債権処理を加速。
2004/08
不良債権処理の目処がつき、中国銀が股份有限公司 (株式会社)化。
2004/09
中国建設銀が股份有限公司と投資有限責任公司に再編される。
2005/04
中央汇金が中国工商銀行に外準を原資に150億ドルを出資。
2005/10
工商銀が財政部と中央汇金の共同出資の株式会社として再出発。*3
2007/09
中国投資有限責任公司(略称:CIC、中国のSWFにあたる)設立。
当時1.43兆ドルともなった外準から余剰分の一部である2000億ドルが運用原資として充てられた。
うち2/3を中央汇金買収と国内銀行への資本注入に用いることになる。*4
2007/12
中央汇金が政策銀行から商業銀行への転換を目指す国家開発銀行に200億ドル出資。
2008/09
中央汇金が株式市場安定化のために上場企業株式の保有を増加させると発表。
建設銀・中国銀・工商銀株を買い増し。
2008/11
中央汇金が中国農業銀行に190億ドル資本注入。
2009/01
中国農業銀行が財政部と中央汇金の共同出資の株式会社として再出発。


2.株式会社への再編→上場に向けた改革

資金調達目的と同等に、もしくはそれ以上に重要視された所有の分散化によるガバナンス強化


2004/08
交通銀が「戦略的投資家」としてHSBCを受け入れ。HSBCは19.9%の株を取得。
2005
バンカメとテマセクが建設銀株をそれぞれ9.0%、5.1%取得。
RBS、UBS、アジア開発銀、テマセクが中国銀株を計16.19%取得。
交通銀(4大銀よりも先)・建設銀が香港市場に上場。
2006
GS、アリアンツ、アメリカン・エキスプレスが総額38億ドルを通じて工商銀株全体の8.44%を取得。
中国銀が香港・上海市場と相次ぎ上場。
工商銀が香港・上海同時上場。(160億ドル+59億ドル=219億ドルを調達。当時IPOとして史上最大規模。)
2007
建設銀が上海市場に上場。
2010
農業銀が香港・上海同時上場。(220.92億ドルを調達し、史上最大規模のIPOに。)



改革が進んでいるとはいえ、以下の各銀行の株主構成('06/10現在なので参考程度にどうぞ)を見るとJBpressのこの記事で「国策銀行」や「Red Capitalism」と指摘されるような現状がある。


f:id:call_me_nots:20101223220816p:image

Image from: 「中国の国有商業銀行の経営状況」国際金融情報センター)[.pdf]


これらの他にも、国有銀行改革だけでなく、非流通株改革を始めとする資本市場の活性化*5が果たす役割も以下の書籍【1】では述べられている。



Reference
【1】

チャイナ・アズ・ナンバーワン

チャイナ・アズ・ナンバーワン


【2】

【3】
「中国企業の海外投資戦略と政府系ファンド - 研究レポート(富士通)」
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2008/no315.pdf

*1:中国の中央銀行

*2:略称:SAFE

*3:工商銀の子会社が政府系出資による他企業(国内外問わず)の受け皿を提供することもある

*4:残りの1/3は海外での運用。ただし、初の海外運用は上場を控えていた米PE「ブラックストーン・グループ」。これは設立前の'07/05に行われているが、最終的には大幅なキャピタルロスを生むことに。

*5:特に、上海証券取引所は2009年の売買代金で東証を抜いている