「リパトリにはベットするな」
東北地方太平洋沖地震の翌週、マーケットでは阪神淡路大震災以来の円高に見舞われ、協調介入まで行われたのは記憶に新しい。
流動性の低い時間帯では76円台まで急進しましたが、その前後で、今回の影響を受けた日本の投資家が海外投資資産を自国に戻すリパトリエーション(repatriation 、リパトリあるいはレパトリ)が進行するのではないかといった観測が増えました。
今回はそれを否定する側の意見をFTブログ、FT Alphavilleから引用、簡単に翻訳してみます。
間違い等がありましたらご指摘いただけると幸いです。
なお、原文はこちら、脚注およびグラフにおける日本語の記述は私が勝手につけています。
Don't bet on Japanese repatriation
Posted by Izabella Kaminska on Mar 29 09:30.
保険会社やファンドのリパトリが今後の数週間や数ヶ月で円にどのような影響を及ぼすかについて多くの議論が行われている。
その多くは円資産への転換が産むフローが、円高を加速するのではというもの。
しかし、こうしたトレンドは限定的だとの見方をするアナリストも増えている。
ここではCitiFXのOsamu Takashima氏とIssei Suzuki氏による最新の論拠を引用する。(強調はFT Alphaville筆者)
震災による日本国内の投資家によるリパトリは限定的なものになると考えます。
その最初の理由はとても単純。日本の家計が保有する対外資産の比率は今なお非常に低いからです。
日銀の統計(下図参照)によれば、日本の家計は約1400兆円の金融資産を保有するものの、その55%は銀行預金の形態をとっています。他方、株式や投資信託といったリスク資産の比率は非常に限られています。
対外資産として日銀は正確な統計を出していませんが、国内金融資産の約3%である42兆円程度がそれと推定できます。
以下の図では外貨預金*1(約5兆円)、海外の投資信託*2(約25兆円)、売出債*3やサムライ債を含む対外証券投資*4(約9兆円)、FXでの円ショートポジション*5(約3兆円)を含んでいます。
したがって、我々の基本的な認識は、日本の個人投資家はこの国難に耐えている最中にもかかわらず、対外資産を円資産に戻す傾向にはないだろうということです。
というよりもむしろ、彼らは円資産を海外に分散させる長期的なプロセスの中にいると思います。
その上、リパトリのフローがあったとしても、CitiFXの彼らはドルやユーロのヘッジコストの相対的な安さから、日本の外債投資は程よくヘッジが効いていると指摘しています。これはそれらのリパトリが更なる円買い圧力となりにくいことを意味しています。
実際には、国内生保にとってトレジャリー(米国債)よりもJGB(日本国債)を売ってキャッシュにする方が機会に恵まれていると彼らは付け加えています。
結局、望みもしないのにどうして安い為替ヘッジを解かなきゃならないの?ということに尽きますね。
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